Category: Coaching
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コーチングにおける「テーマ設定」の重要性
コーチングといえば「目標設定」そう語られることも少なくありません。たしかに、目標を明確にすることはコーチングにおいてとても大切な要素です。 しかし、コーチとして多くのクライアントと対話を重ねるなかで、たまに感じることがあります。 「クライアントにとって、本当にそれが今このセッションで取り上げるべきテーマなのか?」 目標は、テーマの中に設定されるものであるからこそ、テーマ設定を誤ると、どれだけ明確な目標を立てても、ズレた方向に努力してしまいます。 本記事では、コーチングセッションで最初に必ず聞かれること「今日は何について一緒に考えますか/話したいですか?」というテーマ設定に関する問いについて、私なりの観点や基準を書いていこうと思います。 1. テーマは誰のものか? 大前提として、目標やアクションプランがクライアント自身のものであるように、テーマもクライアント自身のものであるべきです。決して、コーチが提示したり、誘導したりするものではありません。 とはいえ、「何について考えたいですか?」という問いかけは、時にとても抽象的で難しい。特に、現代においては、Chat GPTなどの生成AIに聞けば”答えめいた”情報が出てきますし、SNSで似た課題に向き合っている人の声も簡単に拾うことができます。 それでも”生身の人間”であるコーチと一緒に、1時間前後じっくり考える価値のあるテーマとは何か? 誤解を恐れずにいうと、コーチングセッションの成果の良し悪しは、実は、コーチングセッションが始まる前に、どのようなテーマを準備して臨んだか?ということに尽きるかもしれません。 思い付きで適当にテーマを決めてしまっては、それに沿った目標設定をすることになってしまいますし、その目標に向かったアクションをデザインしていくことに時間を割くことになります。しかし、そのようなアクションは実行されることが少なく、また、アクションがなければ、目標が達成されることもないでしょう。その結果、決して安くはない対価を支払ってまで行ったコーチングセッションが、無駄なものになってしまいかねません。 万人に通用する適切なテーマは存在しないため、クライアント次第になってしまうのですが、コーチングを現在受けている人、またはこれからコーチングを受けようと考えている人は、より有意義な時間を過ごすことができるテーマ選定ができるようになりましょう。 2. なぜテーマ設定が重要なのか? テーマとは、今この瞬間にクライアントが最も向き合いたい問いであり、心の奥から出てくる関心、違和感、願いの出発点です。 前述した通り、目標設定は、そのテーマに対して初めて意味を持ちます。テーマを丁寧に見極めることが、目標の解像度を上げ、行動を本質的なものに変えていきます。 3. テーマを選ぶ5つの観点 もし、毎回テーマ設定で悩んでいる人がいれば、下記の5つの観点から考えてみてください。 A. “今”だからこそ考えたいことか? テーマは”未来”の話でも”過去”の話でもなく、「今ここ」で向き合うに値するものであることが大切です。コーチングセッションの中では、将来のビジョンや過去行ってきたことなどに触れることもありますが、それらはあくまで「今」に向き合うための補助的な位置づけです。 B. 感情が動いているか? 感情が動いているところには、エネルギーの源泉があります。「感情が動くこと」は、テーマに命が宿る瞬間です。 C. 自分にしか決められない問いか? コーチングの時間は、クライアントが「自分自身の思考を深める場」です。だからこそ、自分にしかたどり着くことができない問いをテーマに選ぶ意義があります。 D. 変化を起こしたいという意思があるか? コーチングはマインドや行動変容のプロセスです。したがって、選択するテーマは、自分自身の「変化」への意思が込められている必要があります。 5. 話すことで整理したいと思っているか? 言語化のプロセスを通じて、見えなかったものが見えてくる。そのためには、話しながら考えるというコーチングならではの場が有効です。 テーマは、広く、曖昧で、まだ整理されていないことが多いですが、コーチとの対話を通じて、目標が明確に見えてくるとき、本質的な変化の準備が整ったと言えるでしょう。 4. テーマ設定とは、自分への問いかけ コーチングは「問いの旅」です。「今、自分はどのような問いと向き合うべきなのか?」という自問から、すべてが始まります。 そして、その問いに向き合う過程こそが、クライアントの人生にとって大切な「気づき」と「行動」を生み出す起点になります。 “If I had an hour to solve a problem, I’d spend 55 minutes thinking […]
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「コーチングとは?」はじめてでもわかる基礎知識と実際の進め方
1. コーチングとは何か? 近年、ビジネスシーンや自己成長の場面で「コーチング」という言葉を耳にする機会が増えてきました。「なんとなく聞いたことはあるけれど、具体的にどんなことをするのかよく分からない」「コーチングって、アドバイスをもらうこと?」そんな風に思っている方も少なくないでしょう。 コーチングとは、単なるアドバイスや指導ではありません。コーチ (Coach) と呼ばれる専門家が、クライアント (相談者) との対話を通じて、クライアント自身が持つ潜在的な力や可能性を引き出し、目標達成や自己実現を支援するプロセスです。 「答えはクライアント自身の中にある」という考え方に基づき、コーチは一方的に教えるのではなく、問いかけやフィードバックによってクライアントの思考を深め、自発的な行動変容を促します。 コーチングは、仕事、キャリア、人生のあらゆる側面に活かすことができ、個人の成長や組織の変革を支える力強い手段となっています。 本記事では、コーチングの歴史をたどりながら、今日のコーチングがどのように発展してきたのか見ていきましょう。 2. コーチングの歴史1 コーチ (Coach) の語源と由来 「コーチ」という言葉は、もともと15世紀のハンガリーの村「コチ (Kocs) 」に由来しています。当時、Kocs村で製造された快適な馬車が”coach”と呼ばれるようになり、やがて「目的地へ人を運ぶ手段」を意味するようになりました。この「人を目的地へ運ぶ」というニュアンスが、現代のコーチングにも引き継がれています。すなわち、コーチはクライアントを「今いる場所から、目指す場所へと導く」存在です。 スポーツからビジネスへの広がり 近代的なコーチングの原型は、スポーツの世界に見られます。特に、アメリカでは、アスリートのパフォーマンス向上を支援する「コーチ」という役割が確立され、目標達成に向けた指導・サポートが体系化されていきました。このアスリート支援の考え方が、1970年代頃から教育分野やビジネス分野にも応用され始めました。特に、経営者やリーダーに対する個別サポート (エグゼクティブ・コーチング) が注目され、個人の内面に働きかける新しい形の支援手法として発展していきます。 コーチングの発展と国際的標準化 1990年代に入ると、コーチングはさらに専門職としての認知を高めるようになります。この動きを加速させたのが、1995年に設立され、現在の国際コーチング連盟の前身である”International Coach Federation (ICF | 国際コーチ連盟)” です。ICFは、コーチングの倫理規定やコアコンピテンシーを定め、プロフェッショナルなコーチングの質を保証するための認定制度を整えました。これにより、単なるアドバイスや相談役とは異なる、「体系的な専門スキルをもったコーチング」という新たな認識が広まっていきます。 現在では、世界中で5.5万人以上のICF認定コーチが活動2しており、ビジネス、キャリア、ライフスタイル、健康など、様々な領域でコーチングが活用されています。 3. コーチングの定義と特徴 ICFが定めるコーチングの公式定義 ICFはコーチングを次のように定義しています。3 Partnering with clients in a thought-provoking and creative process that inspires them to recognize and maximize their personal and […]
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コーチングの効果を最大化できる人の共通点とは?〜アクセルを踏む人にこそ、コーチングは力を発揮する〜
「コーチングって本当に効果があるの?」「コーチングを受けてみたけど、あまり変化を感じられなかった」 そんな声を耳にすることがあります。一方で、コーチングをきっかけに人生やキャリアを大きく前進させる人も少なくありません。この違いはどこにあるのでしょうか? 結論から言えば、コーチングの効果を最大化できる人とは、誤解を恐れずに言えば「自ら意思決定し、行動できる人」です。 コーチングは行動する人のための“内省エンジン” コーチングでは、はじめに中長期的なビジョンやゴールを設定し、その後、契約期間中の具体的な目標を決めていきます。必要に応じて過去を振り返り、見えない未来を言語化する作業も行います。 こうしたプロセスの中で、「思考が整理された」「新しい気づきを得た」といったメリットを実感することは多いです。しかし、それらを行動に移さなければ、現実は何も変わりません。 実際には、思考が完全に整理されていなくても、新しい気づきがなくても、とにかく目標に向かって動いている人の方が、何らかの成果を得ることが多いのです。行動することで、自分の選択が正しかったのかどうか、周囲の反応、成果、失敗など、現実世界から多くのフィードバックを受け取ることができます。 コーチングは“エンジンブレーキ”、止まるためのものではない 行動し続けている人にとって、コーチとの対話はまさに“エンジンブレーキ”のような役割を果たします。止まるためのブレーキではなく、進むための調整。アクセル全開で走っていると、カーブを見落としてしまったり、急に飛び出してきた障害物に対応できないことがあります。時にはスピードを緩め、周囲を確認しながら進む瞬間が必要です。 コーチングは、そんな“調整”の時間。走ってきた道を振り返り、この先の進み方を見直す貴重な機会です。 一方で、アクセルを踏んでいない人には… 行動していない人、つまりアクセルを踏んでいない人にとって、コーチングは思考のシミュレーションゲームにとどまってしまいます。どんなに綿密に考えても、現実には1ミリも動いていない――これでは、どれだけコーチングを受けても成果にはつながりません。 たとえ不安でも、正しい方向か確信が持てなくても、まずは一歩踏み出すこと。進み始めれば、方向転換もできるし、止まることもできます。コーチングは教習所のように手取り足取り教える場ではありませんが、進み始めた人に対しては、確実にサポートする力があります。 まずはアクセルを軽く踏んでみよう! コーチングの価値を最大限に活かすためには、まず“動く”ことが大切です。「何となくでも進みたい」「やりたいことが漠然としているけど前に進みたい」そんなあなたにこそ、コーチングは大きな力になります。 コーチングは、あなたの挑戦を支える伴走者です。ぜひ、あなた自身の意思でアクセルを踏み、目的地に向かって進んでいく中で、コーチングという“調整の時間”を取り入れてみませんか? 日本企業のグローバル成長を支える、戦略的人材・組織パートナーCornerstone Strategy LLCは、コーチングとコンサルティングを融合し、人事基盤の構築とグローバル人材育成を支援します。各国の制度や文化に精通し、現地課題にも柔軟に対応。組織と人の可能性を最大限に引き出します。LinkedInやFacebookでも随時発信中です。是非、フォローお願い致します。
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コーチングの目標とは?─ 目的地なき旅にしないために
「コーチング」という言葉は、その語源をたどると「馬車(coach)」に由来します。馬車は人を目的地まで運ぶ乗り物。現代風に言えば、タクシーのような存在です。 タクシーは、行き先が明確だからこそ機能します。「なんとなく移動したい」というだけでは、どこへ向かえばいいのかわからず、ただ乗っているだけになってしまいます。 これは、コーチングにも当てはまる話です。 タクシーに乗るときの前提 ─ コーチングにも共通する「目的地」の明確さ タクシーを利用するシーンはさまざまですが、共通するのは以下のような状況です: どのシーンでも、共通する前提は「目的地があること」。目的地がなければ、そもそもタクシーに乗ろうとは思わないはずです。 そして、乗車後まず行うのは、「行き先の伝達」です。希望するルートがあればそれも伝えます。その情報があるからこそ、タクシーは安全かつスムーズに目的地へと向かうことができるのです。 この点は、コーチングも、まったく同じです。 コーチングの出発点: ビジョンと目的の言語化 コーチングの初期段階では、クライアントが目指す長期的なビジョンを言語化するところから始まります。「どんな未来を実現したいか」「どんな状態になりたいか」という問いに対して、自分の価値観や理想を言葉にしていきます。 そのビジョンに対して、「なぜそれを実現したいのか?」という目的 (動機・背景) も掘り下げていきます。 ただし、ビジョンや目的は抽象的な表現になりがちです。そこで、次に必要になるのが、「何がどうなっていたら、それが実現したと言えるのか?」という問いへの答え。つまり、「目標(ゴール) 」です。 SMARTな目標設定: 具体性と現実性のあるゴールを設定する コーチングに限った話ではないですが、目標設定は曖昧な願望ではなく、SMARTの原則に基づいて設定すると良いです。 目標を細分化すると見える道筋 SMARTの原則に基づいて設定した目標を、さらに分解していくと、「プロセスゴール(中間成果)」が浮かび上がってきます。プロセスゴールも上位概念の目標と同様、SMARTの原則に基づいて設定します。 海外駐在員Tさんのケースで見てみましょう。 ビジョンと目的 (Tさんの場合) 複数の目標 (ビジョンをSMARTの原則に基づいて言語化したもの) 分野 SMART目標 語学力 6ヶ月以内にTOEICスコア850点を取得する(現在700点) 対人関係構築 駐在後3ヶ月以内に現地チームの主要メンバー5人と1on1を実施し、関係性に関するフィードバックを得る プレゼンテーション 駐在後6ヶ月以内に英語での営業プレゼンを3回実施し、最低1件の商談獲得に成功する 異文化理解・適応 渡航前までにアメリカのビジネス慣習に関する書籍を2冊読了し、現地スタッフへの質問リストを10件用意する 語学力に焦点を充てたプロセスゴール 語学力目標の中でも進捗が可視化しやすいTOEICスコアに焦点をあて、目標をさらに分解します。 目標: 6ヶ月以内にTOEICスコア850点を取得する(現在700点) 【プロセスゴール1】リーディングセクションで450点を取得 【プロセスゴール2】リスニングセクションで400点を取得 このように最終目標から逆算して細分化していくと、具体的な行動が少しずつ見えてきます。 セッションゴール: 1回の対話で扱う「小さな目的地」 コーチングセッションでは、上記のプロセスゴールをもとに、毎回「セッションゴール (小さな目的地)」を設定します。 例えば こうしたセッションゴールを積み重ねることで、大きな目標への到達が可能になります。 「何をしたいかわからない」状態でのコーチングは… 時には、「将来何をしたらよいか分からない」という漠然とした状態でコーチングを受けようとする方もいます。もちろん、コーチはそのような状態にも寄り添い、問いかけを通じて想いや価値観を掘り起こすサポートをします。 ただし、完全に行き先が見えていない状態では、対話が停滞してしまうこともあるのが事実です。 どのような状態でコーチングセッションを受けても、その瞬間は「受けてよかった」という感想を持っていただけるかもしれません。しかし、その先が描けなければ、目的地のないタクシーに乗って、運転手と雑談しているだけの状態に似てしまいます。 […]
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Cornerstone Strategy LLCのご紹介
設立背景 外務省の海外進出日系企業拠点数調査*1によると、2023年10月1日時点で海外に拠点を構える日系企業の拠点数は、全世界で82,224拠点にものぼります。2019年の同数値は74,072拠点で、世界的なパンデミックの影響を受け、2021年に一時減少したものの、この5年間で8,000超、日系企業の拠点が増加しています。日本との地理的な近さやアジア各国の経済成長の観点からアジアの拠点数が群を抜いていますが、アジア地域に次いで拠点数の多い地域は北米(アメリカ・カナダ)であり、2023年時点で約1万拠点あります。 日系企業の海外展開を進めていく中で、多くの企業が駐在員を現地に派遣し、事業立ち上げから現地企業のM&Aによる子会社化、事業管理、日本本社へのレポーティング等を行います。しかし、事業開発・推進・業務管理などのビジネスのフロントラインで活躍する人材の派遣は行うものの、IT、経理、人事などの管理部門の人材は、各国の法令等や商慣習などが異なることもあり、現地人材を採用するなどして積極的に日本本社から駐在員派遣は行われないことが多いです。他方で、海外で事業推進していく際には、特に、現地人材のマネジメントや駐在員の環境適応、組織文化の浸透・統合といった課題に直面している海外子会社等は少なくなく、フロントラインにいる駐在員にとっては、専門性外の領域になるため、課題対処が後手に回ってしまうこともしばしばあります。 私たち Cornerstone Strategy LLC は、こうした課題に取り組む企業を支援するために設立されました。企業が持続可能な成長を実現するための「礎」となる組織と人材戦略を共に築き上げます。 私たちは”Japan to the World”をパーパスに掲げ、日本企業の世界市場におけるビジネスの成功を組織・人材の観点から戦略的パートナーシップとして支援しています。 社名に込めた想い 当社の名前である”Cornerstone Strategy”には、私たちのビジョンと使命が込められています。”Cornerstone”とは「礎石」という意味で、建築における基礎となる石を意味しています。私たちはこれをビジネス基盤としての「組織」と「人材」に置き換えて考えています。 日本企業が海外市場で持続的に成長するためには、戦略的に優れた組織マネジメントと高いパフォーマンスを発揮する人材が不可欠です。 私たちは、日系企業の海外進出や海外での事業推進にあたり、組織と人材戦略を早期に適切に構築することが、企業の成功に直結すると信じています。 Cornerstone Strategy LLCは、こうした理念のもと、日米間の架け橋となり、クライアント企業がそのビジョンを達成するための戦略的パートナーであり続けます。 提供するサービス 当社は、以下のサービスを通じて、日本本社を持つ海外企業が米国市場で強固な組織・人材基盤を築き、成功を収める支援を行っています。 エグゼクティブ・コーチング 経営層やリーダーシップチームに向けたエグゼクティブ・コーチングを提供しています。<主なテーマ> ビジネス・コーチング マネージャーやチームリーダーを対象に、現場での課題解決や目標達成を支援するビジネス・コーチングを提供しています。 <主なテーマ> キャリア・コーチング 現地に駐在する日本人社員やその家族に向けたキャリア・コーチングを提供しています。 <主なテーマ> • 駐在員のキャリア支援: 異文化での適応やキャリアの方向性の明確化 • 家族のサポート: 駐在員家族(例: 駐妻・駐夫)のキャリア継続や生活支援 HRコンサルティング 日本企業のグローバル展開における人事戦略を包括的に支援します。 <主なテーマ> • 人事戦略策定: 事業戦略に基づいた組織・人材戦略の構築 • タレントマネジメント: ハイパフォーマーの育成やサクセッションプランの策定 • 文化統合と組織再編: M&A後の組織統合や文化統合の支援 当社の特徴 私たちは、日系企業や在米日本人が抱える課題に深い理解と共感をするとともに、戦略的パートナーとして、課題解決に向けて伴走します。 お問い合わせ 貴社のアメリカでの成功を共に創り上げるお手伝いをさせていただける日を楽しみにしています! Cornerstone Strategy […]