米国給与計算実務シリーズ―RROP

最終更新日:2025年10月1日

アメリカのFLSAでは、残業代を計算する際の賃金率を“Regular Rate of Pay (RROP)” と呼びます。このRROPを正しく理解し、適切に計算することは、企業がコンプライアンスを守るうえで、非常に重要です。

本記事では、いくつかケースを交えながら、RROPの基本的な概念を解説します。

RROPの基本概念

RROPは「その週に支払われた通常の賃金を、実際に働いた総労働時間で割った値」です。
これは、時間給の従業員だけでなく、手当やボーナスなども加味した総支払額をベースに算出します。

RROPは、Non-Exempt従業員のみに適用されます。Exempt従業員には残業代支払い義務がないため、RROPの計算対象外です。

RROPに含めるべき支払い

FLSAでは、特定の除外項目を除き、ほとんどの支払いをRROPに含める必要があると定めています。

シフト手当 (Shift Differential)

夜勤や早朝勤務などのシフト勤務に対して支払われる手当です。FLSAでは、シフト手当自体の支払い義務を要求していないですが、もし雇用主が従業員にシフト手当を支払った場合には、シフト手当の金額をRROPに含めなければなりません。

例: 時給$15.00、夜勤手当+$0.50の従業員が昼勤務20時間、夜勤25時間勤務した場合

昼勤務: $15.00/時間 × 20時間 = $300.00

夜勤: $15.50/時間 × 25時間 = $387.50

合計: $687.50

勤務時間: 45時間

RROP: $15.28/時間 (= $687.50 / 45時間)

非裁量的ボーナス (Nondiscretionary Bonus)

生産性、効率、出勤率、品質など、明確な基準に基づいて支払われるボーナス。これらは必ずRROPに含めなければなりません。

例: 3ヶ月間 (13週間) で生産目標を達成し、$2,250のボーナスを獲得、1週間あたり44時間勤務

  • 週ごとのボーナス配分: $2,250 / 13週間 ≒ $173.08/週
  • 1時間あたりのボーナス額計算: $173.08 / 44時間 ≒ $3.93
  • 割増賃金: $3.93 × 0.5 ≒ $1.97
  • 週当たりの残業代: $1.97 × 4時間 = $7.88
  • 3ヶ月 (13週)合計: $7.88 × 13週 = $102.44

RROPに含めない支払 (除外項目)

以下は、RROPに含めなくて代表的な良い項目です。

  • ギフト: 記念日、特別な機会の支払いで、労働時間や成果とは無関係なもの)
  • 経費精算: 出張費や業務上の立替経費など
  • 労働していない時間の支払い: 有給休暇、病欠、祝日、家族医療休暇、軍務休暇など
  • 休暇勤務や休暇放棄に対する手当 (ただし、実労働時間分は含める)
  • 株式関連報酬: ストックオプション、従業員持ち株制度など
  • 裁量的ボーナス: 年末ホリデーボーナスなど事前に約束されていない完全裁量型のボーナス
  • 一部の勤務ボーナス: 労働協約や条例に基づかないボーナス
  • 休憩時間の賃金: 実労働とみなされない昼休みなど
  • 福利厚生・Perks: 整体、マッサージ、ジム利用、ウェルネスプログラム、従業員割引、授業料補助、養子縁組サポートなど
  • 出勤保証手当 (Show-up Pay): 出勤したものの、実際に労働していない時間に対する保証的な支払い
  • 呼び戻し手当 (Call-back Pay): 通常勤務外に呼び戻された際の保証的な支払い。※実労働時間分はRROPに含める
  • 州・地方規制に基づく罰則的支払い: シフト変更や急な呼び出しに対するペナルティなど

残業代の相殺 (Offset)に使える支払い

FLSAでは、RROPに含めないものの、残業代 (Overtime Premium) の相殺に利用できる支払いも認められています。

  • 残業割増 (Overtime Premium):
    1日8時間超や週40時間超など、FLSAが求める以上の割増支払いが行われている場合、その超過分は残業代相殺に利用可能。
  • 特定の日に勤務した割増 (Premium Pay for Extra Days Worked):
    土曜・日曜・祝日など、本来勤務しない日に勤務した場合に通常単価の1.5倍以上が支払われていれば、相殺に利用可能。
  • 労働協約に基づく時間外割増 (Premium Pay under a CBA)
    CBA (労働協約) に基づき、通常単価の1.5倍以上で支払われるj灌漑勤務のプレミアムは相殺に利用可能。

基本的な労働条件

  • 時給: $12.50
  • Workweek: 日曜日から土曜日
  • Elizabethさんの勤務: 月曜から金曜
  • 休日勤務した場合、時給は2倍 ($25.00)になる

ケース: Elizabethさんが休日勤務した場合

  • 日曜日に4時間勤務
  • 月曜日から金曜日に37時間勤務

FLSAに基づく計算

  • 賃金: $12.50/時間 × 41時間 = $512.50
  • 割増賃金: $12.50/時間 × 0.5 = $6.25
  • 割増賃金額: $6.25/時間 × 1時間 = $6.25
  • 総支給額: $518.75

Elizabethさんのケース

  • 賃金: $12.50/時間 × 37時間 = $462.50
  • 割増賃金額: $25.00/時間 × 4時間 = $100.00
  • 総支給額: $562.50

Elizabethさんは$562.50を受け取っており、FLSAに基づいて計算した賃金水準を上回っているため、問題ない。

まとめ

本記事では、主に割増賃金を計算する際の基準となるRROPについて基本的な事項を紹介しました。

  • RROPに含める支払: 基本時給、シフト手当、非裁量的ボーナスなど
  • RROPから除外される支払い: ギフト、有給休暇、福利厚生、裁量的ボーナスなど
  • 残業代相殺に使える支払: 休日勤務のダブルタイム、CBAに基づく割増など

RROPの誤った取り扱いは、未払い残業代の発生や訴訟リスクに繋がり得ます。

特に州法や労働協約との重複ルールがある場合は注意が必要です。

執筆者 清野 真輔
執筆者 清野 真輔
Founder & CEO, Cornerstone Strategy LLC

アクセンチュア、デロイトトーマツコンサルティング、AIスタートアップにて、10年以上の組織・人材コンサルティング経験を有する。2024年10月にCornerstone Strategy LLCを創業し、在米日系企業の人事機能構築、組織・人材開発を支援

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