コーチングにおける「テーマ設定」の重要性

コーチングといえば「目標設定」
そう語られることも少なくありません。たしかに、目標を明確にすることはコーチングにおいてとても大切な要素です。

しかし、コーチとして多くのクライアントと対話を重ねるなかで、たまに感じることがあります。

「クライアントにとって、本当にそれが今このセッションで取り上げるべきテーマなのか?」

目標は、テーマの中に設定されるものであるからこそ、テーマ設定を誤ると、どれだけ明確な目標を立てても、ズレた方向に努力してしまいます。

本記事では、コーチングセッションで最初に必ず聞かれること「今日は何について一緒に考えますか/話したいですか?」というテーマ設定に関する問いについて、私なりの観点や基準を書いていこうと思います。

テーマは誰のものか?

大前提として、目標やアクションプランがクライアント自身のものであるように、テーマもクライアント自身のものであるべきです。
決して、コーチが提示したり、誘導したりするものではありません。

とはいえ、「何について考えたいですか?」という問いかけは、時にとても抽象的で難しい。
特に、現代においては、Chat GPTなどの生成AIに聞けば”答えめいた”情報が出てきますし、SNSで似た課題に向き合っている人の声も簡単に拾うことができます。

それでも”生身の人間”であるコーチと一緒に、1時間前後じっくり考える価値のあるテーマとは何か?

誤解を恐れずにいうと、コーチングセッションの成果の良し悪しは、実は、コーチングセッションが始まる前に、どのようなテーマを準備して臨んだか?ということに尽きるかもしれません。

思い付きで適当にテーマを決めてしまっては、それに沿った目標設定をすることになってしまいますし、その目標に向かったアクションをデザインしていくことに時間を割くことになります。
しかし、そのようなアクションは実行されることが少なく、また、アクションがなければ、目標が達成されることもないでしょう。
その結果、決して安くはない対価を支払ってまで行ったコーチングセッションが、無駄なものになってしまいかねません。

万人に通用する適切なテーマは存在しないため、クライアント次第になってしまうのですが、コーチングを現在受けている人、またはこれからコーチングを受けようと考えている人は、より有意義な時間を過ごすことができるテーマ選定ができるようになりましょう。

なぜテーマ設定が重要なのか?

テーマとは、今この瞬間にクライアントが最も向き合いたい問いであり、心の奥から出てくる関心、違和感、願いの出発点です。

前述した通り、目標設定は、そのテーマに対して初めて意味を持ちます。
テーマを丁寧に見極めることが、目標の解像度を上げ、行動を本質的なものに変えていきます。

テーマを選ぶ5つの観点

もし、毎回テーマ設定で悩んでいる人がいれば、下記の5つの観点から考えてみてください。

“今”だからこそ考えたいことか?

テーマは”未来”の話でも”過去”の話でもなく、「今ここ」で向き合うに値するものであることが大切です。
コーチングセッションの中では、将来のビジョンや過去行ってきたことなどに触れることもありますが、それらはあくまで「今」に向き合うための補助的な位置づけです。

  • 今のタイミングで、最も気になっていることは何ですか?
  • 「そろそろ向き合わなければ」と思っていたことは何ですか?

感情が動いているか?

感情が動いているところには、エネルギーの源泉があります。
「感情が動くこと」は、テーマに命が宿る瞬間です。

  • 最近、モヤモヤ、イライラ、不安、ワクワクした出来事はありましたか?
  • その感情の奥には、どのような価値観や願いが隠れていますか?

自分にしか決められない問いか?

コーチングの時間は、クライアントが「自分自身の思考を深める場」です。
だからこそ、自分にしかたどり着くことができない問いをテーマに選ぶ意義があります。

  • AIに聞いたり、ネットで検索しても”ピンとこない”ことはありませんか?
  • 他人の意見ではなく、自分の中に答えを見つけたい/見つけるべきと考えることはありませんか?

変化を起こしたいという意思があるか?

コーチングはマインドや行動変容のプロセスです。
したがって、選択するテーマは、自分自身の「変化」への意思が込められている必要があります。

  • このテーマを考えることで、何かが変わる予感がありますか?
  • 今の状態に”違和感”を持ち、「何とかしたい」と感じていますか?

話すことで整理したいと思っているか?

言語化のプロセスを通じて、見えなかったものが見えてくる。
そのためには、話しながら考えるというコーチングならではの場が有効です。

  • 頭の中ではぐるぐるしているけれど、言葉にすることで整理できそうですか?
  • 自分一人ではまとまらないと感じているテーマですか?

テーマは、広く、曖昧で、まだ整理されていないことが多いですが、コーチとの対話を通じて、目標が明確に見えてくるとき、本質的な変化の準備が整ったと言えるでしょう。

テーマ設定とは、自分への問いかけ

コーチングは「問いの旅」です。
「今、自分はどのような問いと向き合うべきなのか?」という自問から、すべてが始まります。

そして、その問いに向き合う過程こそが、クライアントの人生にとって大切な「気づき」と「行動」を生み出す起点になります。

“If I had an hour to solve a problem, I’d spend 55 minutes thinking about the problem and five minutes thinking about solutions.” 
― Albert Einstein ―

相対性理論の発見などで有名なアインシュタインも、問題解決のために1時間の時間を与えられたなら、55分間を何が問題なのか?という問いの設定に時間を割き、残りの5分で解決策を考えるとい言っています。

それだけ、そもそも何が問題なのか?どのような問いと向き合わなければならないか?ということが重要であるということです。逆に言うと、適切な問いが設定できれば、答え (解決策) は自ずと導かれるとも言えます。

もしあなたがコーチなら、クライアントが自分自身の”問い”を見つけられるよう、対話の中でそっと寄り添ってみてください。

もしあなたがクライアントなら、AIでもSNSでもない、生身の人間のコーチとの対話の中で、「本当に考えたいこと」をじっくり探してみてください。

そこには、まだ言葉になっていない、でも確かに感じている”人生の焦点”があるはずです。

執筆者 清野 真輔
執筆者 清野 真輔
Founder & CEO, Cornerstone Strategy LLC

アクセンチュア、デロイトトーマツコンサルティング、AIスタートアップにて、10年以上の組織・人材コンサルティング経験を有する。2024年10月にCornerstone Strategy LLCを創業し、在米日系企業の人事機能構築、組織・人材開発を支援

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